理想と実態のギャップに迫る。7割の企業が「人材登用・異動・抜擢にデータを活用できていない」と回答。
データを根拠にした人事施策を行っているのは3割未満
人事業務のDXを推進する企業が増えているなか、取得したデータは人材戦略に活かされているのだろうか? 同研究所は、最初に「人事情報や従業員データを活用して、人材の登用・異動・配置・抜擢を行うことができているか」を尋ねた。その結果、「行うことができている」は3%で、「どちらかといえば行うことができている」が26%となった。「人事施策にデータを活用できている」と答えたのは全体の3割未満で、残りの7割は客観的なデータを根拠にした人事決定ができていなかった。
「人事情報や従業員データをどのように活用しているか?」という問に対し、最も回答が多かったのは「人材情報の可視化」で48%と約半数にのぼる。間を空けて「人員計画の策定」の37.3%、「人材の採用と配置」の36.3%、「採用計画の策定」の35.7%が続いた。「人事施策の策定や決定のプロセスにデータを活かせている企業は、およそ3社に1社という状況のようだ。
「キャリア志向」や「モチベーション」など定性的データに人事は注目
さらに、同研究所は「今後、人事情報や従業員データをどのように活用していきたいか」と質問し、現状とのギャップを分析している。両者の乖離が最も大きかった項目は「タレントの特定(次世代リーダー・抜てき対象)」で、その差は25.9%だった。以降は、「能力開発」が25.2%、「育成計画の策定」が22.1%と続いた。これらは、先述の「データ活用実態」で下位となっていた3項目にあたる。いずれもキャリア構築や育成に関わる内容であり、従業員の成長にデータをもっと活かしたいと考えている様子がうかがえる。一方、ほとんどギャップがない項目は「異動」だ。その差はわずか-1.6%であり、現状において充分にデータを活用できているとみてよいだろう。
同様に、「タレントマネジメントにおける情報活用」について、現状と今後のギャップを比較している。その差が最も大きかったのは「キャリア志向」の17.5%で、以下大きい順に「モチベーション」の12.5%、「適正」の11.1%、「性格」の5.5%であった。人事担当者は、従業員の志向や内面にある考えなど、直接目に見えないソフト面の情報に注目しているようだ。
HRテクノロジーの活用により、人事領域において様々なデータが取得できるようになっている。調査結果から、人事担当者は、暗黙知や主観、勘を基にした従来の手法から、客観的なデータを活用した施策決定へ移行したいと考えていることがうかがえた。そのためにも、データ活用の現状と今後目指す姿とのギャップを正確に把握し、具体的な改善計画を社内に示していくことが必要だろう。
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