業種や地域によって導入率に差も。3割以上の企業がテレワークを導入も、約半数はデメリットを多く感じている。
3割超の企業がテレワークを実施も、メリットとデメリットは拮抗する結果に
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、政府は企業に対してテレワークを推奨し、導入に係る経費について助成金や補助金制度を設けるなど、さまざまな支援策を実施している。そのような中、企業におけるテレワークの実施状況はどのようになっているのだろうか。
はじめにTDBは、調査対象企業に対して「テレワーク実施状況と見解」について尋ねている。その結果、「テレワークを実施している」が31.5%、「実施していない」が61.5%となった。
「テレワークを実施している」とした企業の回答の見解を見ると、「メリットの方が多い」と考えている企業が15.1%だったのに対し、「デメリットの方が多い」とした企業は16.4%となり、ほぼ拮抗する結果となった。
企業規模と従業員数が大きくなるほど、テレワークの導入率が高い傾向に
次に、「テレワークを実施している」とした企業を「規模別」に見ると、「大企業」では46%と、およそ半数に迫った。他方で、中小企業では29.1%、うち小規模企業では19.8%で、企業規模が小さくなるほどテレワークの実施率が低い状況がうかがえる。
また、「従業員数別」に見ると、「300人超」の企業ではテレワーク実施率が57.6%だった。以下、「101~300人」が48.7%、「51~100人」が34.4%などと続き、従業員数が多い企業ほど、テレワークが進んでいる傾向が明らかとなった。
テレワークを導入している企業のうち、従業員数別にメリット/デメリットの回答率を比較すると、従業員数が「300人超」の企業は「メリットの方が多い」が45.5%、「デメリットの方が多い」が12.1%となり、メリットをより感じている割合が最も高かった。
「製造業」と「非製造業」でテレワーク実施率に差が。業種別では「情報サービス」がトップ
次に、同社は「テレワーク実施率」を、「製造業」と「非製造業」の業界別に分けて比較した。すると、「製造業」が26%、「非製造業」が33.5%で、7.5ポイントの差があった。製造業は工場などでの現場作業があるため、テレワークの実施が困難な場合が多いと推測できる。実際に製造業の企業からは、「業務の中で実物の確認や輸送等がほぼ必須となるため、テレワークが導入できない」といった声があがった。
また、「テレワーク実施率」を業種別に見ると、ソフト受託開発やパッケージソフトなどを含む「情報サービス」が81%となり、最も高かった。さらに、メリット/デメリットの回答率を比較すると、「メリットの方が多い」が47.6%、「デメリットの方が多い」が33.3%となり、「メリットの方が多い」と感じている人が多いことがわかった。
他方で、現場での作業が多い「建設」(22.6%)や「機械製造」(21.7%)、「飲食料品・飼料製造」(12.9%)などでは、テレワーク実施率が低水準だった。
「1都3県」のテレワーク実施率が突出して高く、東京は半数超え
次に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の「1都3県」におけるテレワークの実施率を見ると、47.2%となった。これは、全体の31.5%を15.7ポイント上回る結果だ。なかでも新型コロナの感染者数が多く、かつテレワーク支援制度が比較的充実している「東京都」では56.3%と、半数以上の企業がテレワークを実施していることが判明した。
具体的なメリットは「通勤に充てていた時間を有効活用できる」がトップ
最後に、同社はアンケートに寄せられた自由回答から、「具体的なメリットやデメリット」について集計した。すると、「メリットの方が多い」とした企業の回答は、「通勤や移動に充てていた時間を有効活用できる」が35.7%でトップだった。以下、「新型コロナの感染を防げる」が15.2%、「ワークライフバランスを実現できる」が13%などと続いた。
一方で、「デメリットの方が多い」としている企業の回答は、「社内コミュニケーションが減少する、意思疎通が困難」が26.6%で最も高かった。以下、「できる業務が限られる」が19.3%、「進捗や成果が把握しにくい」が14.6%などと続いた。
調査の結果から、企業規模別や業種別、地域別によるテレワークの実施状況がわかった。各企業によって捉え方が異なるため、十分にメリット/デメリットを比較検討し、従業員が気持ちよく働ける環境を整えていくことが大切ではないだろうか。
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