2018年10月に経団連より「採用指針の廃止」が発表され、遅れて「政府主導の就活ルール」が新設となった。これにより20卒より採用活動が大きく変化する。これを受け、当事者である就活生はどのようにかんがえているのだろうか。その真意を探るべく、パソナ総合研究所は2020年3月卒業予定（いわゆる20卒）の全国の大学生・大学院生622名を対象に『就職活動のあり方に関する学生意識調査』を実施し、同年10月に結果を明らかにしている。なお、本アンケートの調査期間は経団連からの発表直前の2018年9月13日～19日で、インターネットを通じて回答を得ている。混乱した中での生の声を紹介していこう。

「就活ルール」の廃止は5割が賛成、インターシップの早期化に「ルールは形骸化している」と学生も感じている

就職活動の開始時期を定めた「就活ルール」の廃止について意見を聞いたところ、賛否がほぼ2極化した。「賛成（廃止すべき）」と回答したのは49.4％。これに対し「反対（廃止すべきでない）」は39.7％、「わからない」は、10.9%であった。

※株式会社パソナグループ調べ

就活ルール廃止に『賛成』の理由は「自分のペースで企業選びができる」から

上記の設問を受けて気になるのは、そう答えた理由だ。就活ルール廃止に「賛成」（廃止すべき）と答えた学生に理由を複数回答で聞いている。最も多かったのは「自分のペースで企業選びができるから」で、224名が選んでいる。次点は116名が回答した「早期に内定を得られるから」。

「その他」の回答は38名。うち14名は自由記述で「ルールがすでに形骸化している」ことに言及していた。他に挙がった意見は、「多くの企業がインターンシップ等で学生の早期選考を行なっており、ルール自体が形骸化している」「現行ルールは海外留学経験者などが就職活動を行いにくい」「新卒一括採用という仕組みが、雇用の流動性が高まった現代にそぐわない」などであった。

※株式会社パソナグループ調べ

就活ルール廃止『反対』のワケは、長期化する就職活動への懸念

続いて、就活ルール廃止に『反対』（廃止すべきでない）と答えた学生の理由を探ろう。こちらも、理由を複数回答で選んでもらっている。最も多かった回答は「学生生活全体のスケジュールが立てにくくなるから」で206名。次に「就職活動の期間が長引くから」の62名。「その他」の回答は34名となった。

「その他」の主な内容としては、次のものがある。「早期に就職活動を始めた学生が有利になり、勉強や部活動に真面目に打ち込む学生が不利になる」「1年生など、まだ視野も狭く経験も浅い状態で将来を決めなければいけない状況になる」「本来大学は学ぶための場であり、就職活動のためだけの場ではない」。

※株式会社パソナグループ調べ

就職活動の時期を自由に決められる場合でも、3年生のうちに開始したい

就活ルールの廃止に『賛成』の人も『反対』の人も、その理由に就活の時期を挙げていた。では、学生自身は就職活動をいつから開始するのが好ましいと考えているのか。最も多かったのは、22.3％が回答した「3年生の8月（夏休み）」。次点は「3年生の12月（冬休み）」で17.0％が選んでいた。以降、13.5%の「3年生の2月（春休み）」、ともに13.3％が回答した「3年生の4月（新年度）」と「4年生の4月（新年度）」が続く。「2年生以前」も8.8%おり、ゼミや卒論で多忙になる4年生になる前に開始したい学生は、全体の75.1％もいた。

※株式会社パソナグループ調べ

就職活動開始までにやりたいことは「学業」、学生の本分である学びを渇望する声が目立つ

本調査では就職活動を開始するまでにしたいことも聞いている。最も多かった回答は「学業」で457名。その次は「インターンシップ」の386名であった。他にも「スポーツ・趣味」が371名、「アルバイト」が367名。「旅行」は349名などが多かった。また、「海外留学」が268名、「ボランティア活動」は185名となっていた。 

※株式会社パソナグループ調べ

企業側による「採用ルール変更」で就職活動期間が前後に長期化するが、多くの企業で既に行われる「インターンシップ」等でルールは形骸化していることを学生側も理解している。彼らは就職活動に翻弄されるだけでなく、現時点の学生生活を充実させたいとも感じているようだ。