「アルムナイ制度」に関するアンケートの結果レポート 「アルムナイ制度」の導入未実施は約8割で制度浸透も乏しい結果に。

「アルムナイ」とは「元社員(企業の離職者やOB・OG)」のことで、アルムナイと企業が継続的に接点を持ち、再雇用や業務委託する「アルムナイ制度」。元々は外資系企業で盛んな動きであり、近年、「優秀な人材リソース確保」が困難になっている日本でも浸透し始めてきたことで、人事領域の一つの潮流となっています。そこで、貴社での「アルムナイ制度」についてアンケートを実施しました。調査期間は2020年2月17日~3月9日です。

制度の導入未実施は約8割、「アルムナイ制度とは?」という声も。

設問1では、「貴社では「アルムナイ制度」を導入していますか。」と質問しました。



回答結果は、「はい」が23%、「いいえ」が77%という回答結果になりました。このことから、全体数の約8割が実施はしてはおらず、制度の浸透は進んではいないことが伺えます。


しかしながら、「はい」と回答した企業が2割おり、「アルムナイ制度」が認知される以前からかは不明ですが、末尾に記載しますフリーコメントからも、「元社員(企業の離職者やOB・OG)」を制度の名前こそは違いますが、再雇用・委託をしている実態や実績があることがわかります。


それでは、各企業は元社員と再雇用にいたるまで、どのように関係を構築しているのでしょうか?


約7割が「その他」の取り組みでアルムナイとの関係維持。その手法とは?

設問2では「アルムナイとの関係維持を目的とした取組みを教えてください。」と質問しました。



最多回答が、「その他」の66%でした。次いで、「退職時にアルムナイ制度の説明」が17%となり、「SNS等を活用したコミュニティー構築」が6%、「アルムナイ用のウェブサイト運用」が5%、「定期的なニュースレター配信」と「アルムナイイベントの開催」が同数で4%となる結果でした。


多くが、「その他」で関係を構築しており、この結果から具体的な施策が見えませんでした。特に何かをしていなくとも、「在職中に交流が深かった」や、久しぶりに会食をしたなど、より個に近い、ローカルな人間関係ネットワークから再雇用話が沸き上がるのかもしれません。皆さまが、回答の選択肢以外にどのよう構築をしているのか、とても関心のあるところです。


次点で回答が多かった、「退職時にアルムナイ制度の説明」は、人口減少などによって、企業が人材不足を懸念している現状で、退職する社員は、その企業への理解もあり、その職種の経験がある人材でもあります。その社員が勤務時に「良い人材」であったなら、ある程度、退職して年数が経過していても雇用の対象として、企業側が説明しているものと推測できます。


また、SNS等を活用したコミュニティー構築」が6%、「定期的なニュースレター配信」4%の少数派の回答ではありますが、実に「現代」らしいツールで関係構築を行っている様子が伺えます。


もし、最多回答の「その他」に、「個に近しいネットワークを介して会食をしている」などの回答が含まっているのなら、企業としてオフィシャルに開催する「アルムナイイベントの開催」4%よりも、アルムナイ採用に効果的なのかもしれません。


去る者(退職者)との関係維持は意外と難しいもの?

それでは、設問1の回答結から、まだまだ、制度浸透の余地がある雇用制度、「アルムナイ(企業の離職者やOB・OGの再雇用・委託)制度」ですが、この制度のどこに課題を感じているのでしょうか?


設問3では、「アルムナイ制度の導入において、課題を教えてください。」(複数回答)と質問をしました。



その質問に対し、回答数1位は「アルムナイ対象者(元社員)との関係維持」43%、2位が、「その他」28%、3位が「受け入れ体制の整備」24%、つづいて「給与や待遇面の不公平感」が23%、「関係維持のための人的負担」、「社員への制度の周知」、「内部情報の漏洩対策」の各3つが15%とならび、「関係維持のためのコスト」が14%となりました。


回答数1位が「アルムナイ対象者(元社員)との関係維持」に課題を感じるとなった結果は、退職する社員と、その会社に残る社員が同じ境遇ではなくなるということが、大きな要因になると推測できます。同じ会社だからこそ、コミュニケーションも取りやすく、その時々の心境などが共有できます。在職時に個々のつながりを持っていないと、退職後に、なかなか連絡をするなど、現代は個人情報保護の観点からも難しいのかもしれません。


また、退職後に個別のネットワークで、やり取りができたとして、「内部情報の漏洩」を考えると、なかなか会社の話をすることは難しく、久しく退職者とつながりを持つことは容易なことではないと考えられます。


3位の「受け入れ体制の整備」と、ほぼ同じ数であった「給与や待遇面の不公平感」、それにつづく、「関係維持のための人的負担」、社員への制度の周知」、「内部情報の漏洩対策」の各3つですが、これらは社内制度の策定に至るまで時間の要する事柄です。仮に、「受け入れ体制の整備」がうまくいったとして、「給与や待遇面の不公平感」は個々が持つ感情です。なかなか企業としてアプローチしがたい課題です。


企業側としては、「また一緒に働きたい」、「勤務してほしい」という人材に再雇用制度を伝えたいはずです。社員全員に周知はしたいという希望はあるが、伝えた後、はたして、退職するその社員を「また雇用したい」と判断できるのか。それはセンシティブ(繊細)な課題でもあります。そして、そのような良い人材と会社がオフィシャルとして関係維持するときに、「情報の伝達」が不可避です。しかしながら、人事は「内部情報の漏洩」に触れてしまう情報が多々含まれるので、関係維持が難しく、この4つの回答が連動しているとも推測します。


最後に「アルムナイ制度について、あなたのご意見をお聞かせください。」とフリーコメントをいただきました。一部抜粋してご紹介いたします。


【ポジティブな視点からの課題】

  • 働き方の自由度が増すことはいいことです
  • 世界ではじめて人口動態において、超高齢少子生産労働人口減少に突入した 日本において、生産労働人口の確保や高齢化(年金・介護も含む社会保障制度)対策等、決して大げさではなく、この国の在り方として重要な取り組み課題だと考えます。
  • 世間がやるとか、苦し紛れではなく、必要性を把握したうえで自社に合ったものを行なう。


  • 【実質的に導入しているからこそ見える課題】

  • アルムナイ制度はないがブーメラン採用は数名ある。外の空気をもって会社に戻るのは良いが、ぬるま湯だから戻りたいとなると、ぬるま湯体制を直そうとはしないから逆効果。
  • あまり形にこだわることなく、ゆるくつながっているのも手かと思います。今までも部署長が個人的に連絡をとっているなかで、再採用につながったこともあるので、カタカナ言葉で何か新しいものができたようにならずともいいのではないかと考えます。
  • どこまでオフィシャルにするものなのかは目的次第だと思う。辞めた人に対して排他的にならずにインフォーマルに食事の機会を開催することでも現状では担保されている。
  • 今回初めて、以前の従業員を使う機会がありました。突然に親の介護の関係から退社した人員を確保するために、導入してみました
  • アルムナイ制度自体はないのですが、実態としてOBOGが再入職するケースがあります。制度化してしまうと、退職者との関係維持による業務負担や費用が気になります。超少子高齢化の先を考えれば、人口減少が激しい地域では一度接点を持った関係をつなぎとめておきたいと思うのも無理はありませんが、ゆるい内容にしておきたいと思ってしまいます。
  • 会社公認ではない形で有志により運営・実施されている現状。



【処遇の課題】

  • そのまま残った人と、転職して帰ってきた人との処遇差って難しいですよね。あとは「アルムナイ」なんて言葉が意識高い人の流行り言葉になってるのが鼻について鼻について。
  • 再就職した際に、退職前の雇用条件などがリセットされない等のインセンティブがあると再就職率が高まるのではないか。


  • 【双方の希望のミスマッチ】

    • やりたい人、お願い人との合致の違い


    • 【運用自体に課題を感じる】

      • 転職ではなく、定年したOB・OGとの繋がりや、子育て・介護離職者であれば、活用の意義があると思う。
        転職の場合は、既に次の職についており、難しいと思う。
      • 縁あって弊社で働いてくれた先輩へのリスペクトの表明として何らかの形で導入していきたいが、中途退職者への対応が悩ましい


      • 【その他】

        • 初めて知りました。
        • 検討していない。
        • いったんやめた方の採用は難しい。

        •        

          【調査概要】 アンケート名称:「アルムナイ制度」に関するアンケート
          調査主体:PRO-Q編集部(ProFuture株式会社)
          調査期間:2020年2月17日~3月9日
          調査媒体:アンケートメディア 経営PRO-Q/人事・総務PRO-Q
          ※本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
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